コラム
健保法等改正案の衆院通過(改正内容のポイントと問題点の考察)
コラム2026.06.02
- 何が決まったか(事実整理)
「一部保険外療養」制度の創設が最大の焦点です。
項目現時点の政府方針法律上の可能性対象品目OTC類似薬 77成分・約1100品目法文上は追加可能患者負担割合 薬剤費の4分の1**10割(全額)**も可能 施行時期2027年3月─
- 最大の論点:「現時点では」という留保の重大性
上野厚労相の答弁で最も注目すべきは、繰り返し使われた 「現時点では」 という言葉です。
「OTC類似薬以外を追加することは現時点では想定していない」
「現時点で別途の負担を全額とすることは考えていない」
これは裏を返せば、将来の拡大を否定していないことを意味します。共産党・保団連が「無限定な規定」と批判する根拠はここにあります。
- 賛成側・反対側の論理
賛成側の論理
OTC(市販薬)で買える薬を保険で全額まかなう必要はなく、財政効率化は合理的。
附帯決議で「安易な拡大を行わない」「要配慮者への措置の維持」を政府に義務付けた
高額療養費の年間上限創設・出産費用の無償化など、患者に有利な改正も含む。
反対側の論理
「4分の1保険外し」は入口に過ぎず、法文の構造上、歯止めがない。
「現時点では」全額負担を考えていないと言いつつ、大臣自ら法制上の可能性を認めた。
OTC類似薬の範囲の定義も曖昧で、将来の対象拡大リスクがある。
- 論評:制度設計の「抜け穴」が本質的問題
今回の最大の問題は、政策の実態と法文の射程の乖離です。
政府は「OTC類似薬の4分の1だけ」と説明しながら、法律の条文は明らかにそれ以上のことを可能にする構造になっています。これは立法技術としては意図的な「のりしろ」ともいえますが、国民への説明責任の観点からは誠実さを欠きます。
附帯決議は法的拘束力を持たないため、将来の政権や厚労省が運用を変えることは制度上可能です。「安易な拡大を行わない」という附帯決議の言葉が、どこまで実効性を持つかは不透明です。
- 参院審議で問われるべき点
対象品目・負担割合の拡大に対する法的な歯止めの明文化。
「要配慮者」の具体的な定義と保護措置の制度化。
金融所得の保険料反映における捕捉率・公平性の担保。
衆院審議で浮き彫りになった「法文と政府説明のギャップ」を、参院がどこまで詰められるかが焦点となります。保団連が「廃案」を求めていますが、与野党の賛成多数という構図を考えると、修正なき成立の可能性が高い情勢です。
日本医事新報社
https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_28497
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