コラム
新基準で「過労死ライン」以下の労災認定が急増!未申請者は再検討を
コラム2023.07.20
過労死は、過重労働が原因で引き起こされる脳・心臓疾患による死亡と、精神疾患による自死の二つに分けられる。
このうち、精神疾患については申請件数は倍増しているものの、労災認定率は35.8%(うち未遂を含む自殺ものの認定率は43.2%)となっており、認定件数は低調です。
警察庁が発表した「2022年中における自殺の状況」によれば、この年の自殺者21,881人において、「勤務問題」が原因の一つとされたのは2,968人ありますが、2022年度の精神障害の労災請求件数のうち自殺に限るとわずか183件です。
単純に比較しても、「勤務問題」で自死した者のうち10分の1以下しか労災申請していないことになります。
それは、ハラスメントや長時間労働など精神疾患の発症にいたった職場環境を「証明」することができずに、泣き寝入りしている遺族が少なくないというこでしょう。
これに対して、脳・心臓疾患の請求件数は昨年・一昨年と減少していたものが、再び増加に転じ、、認定率は38.1%(死亡の場合38.8%)となっており、精神疾患と同じように非常にハードルが高いことが分かります。
一方で、今年の統計には、2021年9月に長時間労働以外の要因も積極的に評価するように改正された脳・心臓疾患の認定基準の影響による変化なのか、労災認定ライン80時間未満の労働時間でも労災認定を決定した件数が増えていることが分かります。
脳・心臓疾患や精神疾患の労災認定の割合が低いのは、企業は多くの場合、自らの労災に対する責任を回避するために事実を隠ぺいしてしまう傾向にあり、本人がなくなっている過労死・自死の場合にはなおさらその証明が困難です。
そのため、労働者側としては、日々の労働時間や仕事の内容について記録を残しておくことで、労働災害に備える必要があります。
過重労働に自分自身や大切な人が悩んでいる場合には、何かの時に備えて、家族が記録を残しておくことも必要でしょう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20230720-00358623