コラム
研究者雇い止めのきっかけは民主党政権?
コラム2023.05.10
「有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる」という労働契約法第18条の “5年ルール”
2012年の法律施行5年後に差し掛かった2017年に、5年が過ぎる直前の有期雇用の労働者を雇い止めする事例が多発し、社会問題になりました。
ただし、研究者に対しては、2015年成立の「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」第15条の2で、「研究者については労働契約法の『五年』を『十年』に読み替える」と規定されました。
このような経緯で、2012年の労働契約法改正から10年後の2022年、2023年に、再度 有期雇用の研究者の雇い止め問題が起きています。
そもそも、これは最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されたもので、雇用の安定化を図る目的の規定です。
その法の主旨を理解せず、無期転換の権利を得る前に雇止めするのは、本来は許されるものではありません。
それを、民主党政権が主導した労働契約法の改正が原因になっているというのは、極右派の本末転倒のかなり穿った見方と言うべきものではないでしょうか?
そのような不毛な議論をする前に、「無期転換」の権利行使を阻止する目的での雇止めを規制する早急な法整備が求められます。
*******************************************
アゴラAGORA
.
研究者雇い止めのきっかけは民主党政権
朝日新聞オンラインが記事「「私は使い捨て」雇い止めの東大助教 50代で直面した研究界の現実」を5月8日に配信した。有期雇用の助教が任期満了となり、無期への転換は叶わず、雇い止めされた。幸いこの研究者はベンチャー企業に転職できたが、東京大学は科学的成果が生まれるチャンスを「みすみす捨てた」という記事である。
昨年来、研究者の雇い止めは何度もメディアに取り上げられてきた。3月末で一段落したと思っていたが、また、同様の記事が出たわけだ。
なぜ、研究者の雇い止めは起きたのだろうか。
きっかけは民主党政権が主導して2012年に改正した労働契約法である。通算5年を超えて有期雇用を続けると、労働者は無期雇用を求めることができると「労働契約法」第18条に定めたのである。
法律施行5年後に差し掛かった2017年に、5年が過ぎる直前の有期雇用の労働者を雇い止めする事例が多発した。繰り返しメディアも取り上げ社会問題になった。僕は民主党政権の失敗が原因であるとの解説記事をアゴラに載せた。
研究者に対しては、2015年成立の「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」第15条の2で、研究者については労働契約法の「五年」を「十年」に読み替えると規定した。研究の強化と活性化のバランスを取ったと厚生労働省は説明している。
このような経緯で、2012年の労働契約法改正から10年後の22年、23年に有期雇用の研究者の雇い止め問題が起きた。民主党政権が主導した労働契約法の改正の悪影響が今になって噴出したのである。
そもそも、なぜ民主党政権は5年たったら無期雇用に求めることができるという法律を作ったのだろうか。その理由はアゴラの記事「論理的に考えられない長妻昭議員」で説明した。
長妻議員は無期雇用原則を企業が守ると信じていたようだが、企業はリスク回避に動いた。5年を超えたら無期雇用と強制されれば、5年未満で契約を解除するのが企業の対応だった。長妻議員は「人件費は固定費」というビジネスの常識を知らなかったのである。
雇い止めされた研究者には同情する。わが国の研究能力を維持していくために、研究者を救う方向に政治が動くように期待する。
https://agora-web.jp/archives/230508075826.html
関連記事
-
コラム新着情報
非正規『無期転換5年ルール』適用を妨げる『不更新条項』は有効か 日通・雇止め訴訟を考察
無期転換「5年ルール」が成立する直前に雇止めされたことが争われた横浜地裁の訴訟 労働者側の訴えが棄却され、それに対して、会社側が東京高裁に控訴したとのこと。 .一審判決の根拠の一つ...
新着情報無期雇用切り替え直前の雇い止め 無効と判断 東京地裁
平成25年(2013年)4月1日より、労働契約法が改正され、「無期転換ルール」が定められました。 .無期転換ルールとは? 無期転換ルールは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契...
お知らせコラム「雇い止め撤回の要求に回答先送り」理研労組が救済申し立て
2013年4月施行の改正労働契約法で、「無期雇用転換5年ルール」が設けられました。 つまり、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、 有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込み...
ご相談・ご依頼はお気軽にどうぞ!
-
【受付時間】9:00~18:00
【定休日】土曜・日曜・祝日