コラム
実はもう財源枯渇:コロナ禍「雇用のセーフティーネット」の深刻状況
コラム2021.04.09
失業保険の財源5兆円近く、雇用調整助成金(雇調金)の財源1兆5000億円以上――2020~21年でこの金額が奇麗に消え、制度はまさに薄氷の上。
雇用保険や雇調金は、一般財政とは切り離され、「労働保険特別会計」で管理されており、政府の一般財政の影響を受けづらく、財源を保全・確保できる側面があります。
この特別会計で管理される雇用勘定には、「雇用保険給付」「雇用保険二事業」「育児休業給付」「就職支援法事業」の大きく4つの事業のための勘定がありますが、雇用保険二事業は事業主の負担で、それ以外は事業主と従業員が折半して負担します。
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この中の雇用保険給付の20年度の収入は4277億円で、このうち保険料収入が4008億円
これに対して支出は1兆7028億円で、このうち失業保険の給付に1兆4843億円を使っており、1兆2751億円の赤字であり、積立金を取り崩すことで埋めました。
結果、積立金残高は前述のように2兆1323億円に減少
さらに、21年度は収入が4306億円で、このうち保険料収入が4006億円を見込んでいますが、支出は1兆7800億円で、このうち失業保険の給付に1兆5772億円
収支の赤字額は1兆3494億円の見込みで、積立金残高は1722億円まで減少
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一方、雇用調整助成金の原資となる雇用保険二事業は、20年度の保険料収入は5878億円で、支出は4兆1172億円、このうち雇調金は3兆2159億円を占め、3兆5294億円もの巨額の赤字となり、積立金である雇用安定資金の取り崩しを行いました。
しかしながら、前述したように19年度の同資金残高は1兆5410億円だったため、実際には積立金では赤字を埋めることはできず、同事業は事実上、“破綻”
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また、雇用保険二事業以外の雇用保険給付事業など3事業は財政負担が認められているのに対して、雇用保険二事業は財政負担が認められていません。
そこで、政府は、臨時特例法を成立させ、急遽 一般会計から雇用安定資金への資金投入(財政負担)と雇用保険の積立金から雇用安定資金への貸出を認めるという裏技を行使
この結果、20年度には雇用安定資金に一般会計から1兆762億円が投入され、雇用保険の積立金から1兆797億円の貸出が実行され、また、21年度も一般会計から363億円が投入され、雇用保険の積立金から6107億円が貸し出される。
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前述した雇用保険の積立金が20年度に19年度から半額以下に減少し、21年度には残高が1722億円に激減する大きな要因は、この雇用安定資金への貸出(20年度と21年度累計で1兆6904億円)にあったのです。
実際、08年のリーマン・ショック後、09年に失業保険受給者が急増した局面でも、雇用保険の積立金は大きく減少することはありませんでしたが、20年度と21年度に雇用安定資金へ貸出を行ったことで、積立金が大きく毀損したことになります。
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「コロナ後」の企業と労働者には、過去に例のない保険料率引き上げという試練が待っているかもしれません。
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https://www.fsight.jp/articles/-/47850