コラム
アイドル脱退で違約金は無効判断、労働者性と違約金について
コラム2023.04.25
労働基準法の制約を受けない業務委託という形態が増えているような気がますが、業務委託契約か労働契約か、その区別が適正になされていなければ、労働基準法違反となります。
形式的には委託契約であったとしても、実態は労働契約であるケースは多いと思われます。
この事件では、アイドルグループを脱退した男性に対し、芸能事務所が違約金の支払いを求めていた訴訟で、大阪地裁は、労働基準法に違反するとして、違約金は無効との判決を出しました。
アイドルグループ「BREAKTHRUOGH」のメンダーだった新澤典将さんが、適応障害を発症し、脱退したことに対して、事務所は契約の違約金条項に基づいて、違約金を請求しましたが、労基法が適用される労働者に該当するか否かが争点となったとされます。
では、業務委託か労働者か、どこで区別されるのでしょうか?
労基法9条によると、労働者とは「事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」とされています。
また厚生労働省のガイドラインでは、
(1)労働が他人の指揮監督下において行われるか、
(2)報酬が労務の対価として支払われるか、
で判断されるとしています。
“指揮監督下と言えるか” については、「依頼や業務への諾否の自由」、「業務遂行上の指揮監督の有無」、「勤務時間や場所などの拘束性」、「他の人が代わりに行うことの可否」 ...などで判断されます。
“報酬の労務対償性”については、「報酬が作業時間ベースで決定されるか」、「仕事の出来栄えにかかわらず減額や増額がなされないか」 ...などが要素となります。
芸能タレント通達
芸能人などのタレントの労働者性については1988年に労働省(現在の厚労省)から通達が出ており、労働者に該当しないための要件が挙げられております。
(1)当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっていること、(2)当人に対する報酬は稼働時間に応じて定められるものではないこと、(3)リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはないこと、(4)契約形態が雇用契約でないこと、の4つの要件をすべて満たす場合は労働者に該当しないとされます。
労基法の違約金規制
労基法16条によりますと、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」とされております。
ただ、「会社に損害を生じさせた場合、○○万円の損害賠償を支払うこと」、「途中退職の際には違約金として○○万円支払うこと」といった予め賠償額を定めることが禁止されるだけで、適切な範囲での労働者への賠償請求が禁止されるものではありません。
これに違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となっております(労基法119条1号)。
このような芸能タレントは特別な事例ですが、一般の企業においても、安易に形式上の契約形態だけで判断するのではなく、労基法9条・厚労省のガイドライン等に照らし合わせて、取り扱いを誤らぬよう慎重な検討が必要でしょう。
企業法務ナビ:
https://www.corporate-legal.jp/news/5242
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